滋賀県高島市の饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩みや終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。
自分で開くセミナーのテーマでよく取り上げるのが「おひとりさま」と「おふたりさま」です。
「おひとりさま」というと連ドラにもあったので、未婚または離婚した単身女性のことかと思われる方もいますが、終活や遺言・相続の現場では性別関係なく「おひとりさま」は高齢の単身世帯を指します。
また「おふたりさま」は高齢の老夫婦などを指しており、どちらかが亡くなればたちまち「おひとりさま」となります。
おひとりさまは元気なうちは特に問題が見えません。
食事、買い物、通院などを自分の力で行います。
しかし、これが体力や病気など様々な問題により出来なくなります。
以前なら出来なくなっても家族が支えていましたが、単身のおひとりさまではそうはいきません。
こうした問題を取り上げた新聞の記事では、おひとりさまが問題を抱えている姿は最悪の場合、死んで初めて気づかれると書かれています。
QOLが下がっていることを周りの誰も気づかないためです。
病院への緊急搬送の際に露見することもあるそうです。
現状では、その問題に直面してしまった人、例えば病院スタッフなどが何とか対応しているようです。
記事では触れられていませんでしたが、単身で認知症になった場合などはさらに問題が難しくなると感じます。
記事ではそうしたおひとりさまへの対応は「行政の役割ではないか」と質問していますが、インタビューを受けている沢村香苗さんはすぐには首肯されません。
行政の実情を把握されているようで、行政が手一杯になっていることや仕組みの範囲の中に入っている人でなければ救えないことを答えられています。
そのため質問している記者も「行政も困っているということでしょうか」と問題の根深さに気づきます。
この記事では亡くなるまでの介護や医療、生活のための財産を中心に取り上げられていましたが、亡くなられてからも様々な課題があります。
まずご遺体を誰が引き受けて葬儀を出すのか。
遠方であっても親族がいる場合もありますが、長年交流が無いと引き取りを拒否される場合もあります。
葬儀後のご遺骨の埋葬の問題もあります。
行政が引き取り手の無い遺骨の保管場所に悩む報道も最近よく目にするようになりました。
銀行等の預金など遺産の相続も発生します。
この相続のために戸籍をたどって、親族に連絡して、初めて死亡の事実を知り驚かれるということもよくあります。
おひとりさまが住んでいた家も空き家となりますし、遺品整理をどうするのかという問題もあります。
電気ガス水道やNHKの契約の会場も必要になります。
代表的なものを挙げてみましたが、親族が行うとしても大変なものなので、たまたま問題に直面した第三者では手出しが出来ないものもあります。
セミナーでは、死後事務委任契約や遺言について説明して、合わせて強調するのが「元気なうちにしか準備できない」ということです。
多くの方はセミナーで聞いた内容に頷かれますが「自分にはまだ早い」と思われる方が多いです。
死後事務委任契約の依頼を受けたお客様に色々と詳細な説明をして打ち合わせを重ねると「死ぬことが目の前に迫ってくるようだ」と驚かれます。
元気なうちに打ち合わせをしてもこうなのですから、死期を感じていよいよとなったタイミングでは気が滅入ってしまって話を打ち切ってしまわれます。
終活にしても相続にしても、問題に行き当たった「困りごと」になってから相談に来られても選択肢がほとんど無く、対症療法的な方法を提案するしかないことがしばしばあります。
問題が起きるのでは無いかという時点の「悩みごと」の段階で来ていただければ、選択肢をいくつか示して、お客様のご希望にできるだけ沿った提案をすることが出来ます。
今は元気だからまだ早い、ではなく、元気な今だからこそ、今後起きるかもしれない問題を専門家と一緒に対策していただきたいと思います。