選挙公約と選挙買収の境界線

滋賀県高島市の饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
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国政選挙であっても地方選挙であっても選挙が近づくと「公約」が出されていきます。
選挙期間中に配られる「選挙公報」に書かれることが一般的ですが、少し前からは「マニフェスト」という名前の元、広報されることが多くなりました。
ただ、選挙公報もマニフェストも実際のところほとんど読まれていないと感じます。
地方選挙の際に何を基準に投票先を選んだか身近な人に尋ねてみたことがあります。
争点となっている一つの問題についての候補者の意見を参考にしたという人はいましたが、そんな人もその他の公約を挙げた人はいませんでした。
後は自分の地域に頻繁に選挙カーで回ってきた人や、辻立ちで見かけた回数が一番多い人などを理由に挙げられました。

そんな中、選挙公約が新人の当選する理由となったと思われる例が新聞の記事に載っていました。

選挙公約の中で「当選したら一世帯当たり●●万円給付します」「子供一人当たり●●万円追加給付します」と掲げたものです。
記事によると新型コロナ感染が広がって以降の時期から直近までで6件あり、いずれも新人が当選しています。
選挙があったばかりの1件を除けば、3件では何らかの形で給付が行われたようです。

記事ではこれは選挙買収ではないか?と疑問を投げかけています。
現に愛知県岡崎市では地元の税理士が刑事告発して不起訴となったものの県警は受理しています。
公職選挙法第221条第1項では、「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。」と買収を禁じています。
これに違反するのではないか、というのです。

地方選挙でこのような声が上がる中、解散がうわさされる衆院選を意識したと思われるこの春の減税措置は買収ではないのでしょうか?
金銭の給付でなくても財産上の利益はあるわけです。
一律に配っていない、という意見もありそうですが、選挙買収でも全員に金をばらまいているわけではなく、転びそうな人にお金を渡します。
選挙前だからやったわけではなくて、時世を見て判断したと説明されるのでしょうが、それであればコロナ流行期から現在までにもっとやる時期があったはずです。
減税であっても現金給付であっても政権与党しかできないことを考えると、与党による一見、合法的な買収ではないかと感じてしまいます。
減税や給付がダメなわけではないのですが、もっと国民が求める時期があるのでは?と考えてしまいます。