誰もが犯罪の被害に遭う可能性がある

滋賀県高島市の饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩みや終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

市役所職員の時の業務の一つに犯罪被害者支援がありました。
犯罪被害者支援とは、犯罪に会った人やその家族に対して経済的・精神的な援助を行う制度です。

1974年の三菱重工ビル爆破事件を契機として作られました。
過激派が仕掛けた爆弾で丸の内の三菱重工ビルが爆破され8人が死亡、380人が負傷しましたが、勤務中の方は労災として補償されたのに、それ以外の人は全く補償が受けられなかったことから始まったものです。
地下鉄サリン事件などをきっかけに、さらに制度の拡充が行われ国や自治体での給付金の制度が等が作られました。

しかし、支給額は被害時の収入に応じて算定されるなどするため、被害者や被害者遺族の生活支援のためには十分とは言えません。
裁判で加害者への賠償判決も出ていますが、支払われないことも多いようです。
新聞記事では、北欧のように国など行政機関が加害者に取り立てたり、立て替えたりする制度の検討を呼びかけていました。

・かんさい情報ネットten 「十分なお金がもらえない…問われる「犯罪被害者等給付金」のあり方 殺人事件の被害者遺族らの訴え」 2022/05/19

・毎日新聞 記者の目 「被害者側に負担強いる犯罪賠償 国が回収、立て替え検討を」 2023/12/08

給付金等の制度があっても、被害者の方は精神的にもダメージを受け、立ち直るためのサポートが必要になります。
滋賀県では、民間団体であるおうみ犯罪被害者支援センターが2000年に設立され、以後、NPO法人や公益社団法人の認定を受けて、ほぼ一手に活動されています。

被害者からの相談を受けるだけでなく、裁判等への同行など、被害者の方に寄り添った対応をされています。
全国でも有数の支援状況となっていると説明を受けた記憶があります。

ただ民間団体であるが故に行政からの支援の仕組み作りが非常に難しい状況です。
私が現職の時にも県内各市町に運営のためのサポートを呼びかけられましたが、他市町の動向と歩調を合わせるため、なかなか支援が進みませんでした。
大津市と甲賀市が先行して支援を開始し、高島市も今年、協定を結んで支援が始まっていますが、まだ全ての市町ではありません。

給付金、賠償金、精神面のサポートなど犯罪被害者支援に関する支援はまだ道半ばです。
おうみ犯罪被害者支援センターの例を考えてみても、実際の活動自体は民間団体であっても、それを支える仕組みを国レベルで組み立てないといけないのではないでしょうか。
警察庁の所管となっていますが、本当に困った人を支える福祉の面があります。
被害者には私たちの誰もがなる可能性があるのですから、福祉の相互扶助として私たち全員で支えていかないといけないと思います。