家族や社会の在り方の変化で詐欺の内容も変化している

滋賀県高島市の饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩みや終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

特殊詐欺による被害が連日報道されています。
警察庁の統計資料を見ると、新型コロナの頃にいったん下がった被害件数や金額も、緩和とともに増加しており、昨年度を上回る件数となりそうです。
手口も年々変化しており、あちこちで被害防止の啓発が行われても、新たな手口が開発されては被害が発生しています。

以前はいわゆる「オレオレ詐欺」などでしたが、その後「還付金詐欺」「架空料金請求詐欺」「キャッシュカード詐欺」「国際ロマンス詐欺」などが生まれています。
詐欺は証拠を残さないためという点もあるのでしょう、電話から始まるものが多いです。
多くのパターンでは被害者に時間がない、損をしてしまう、と焦らせて、十分に考える時間を与えずにお金を振り込ませます。

こうした手口は家族にちょっと相談することで防ぐことができるため、芸人のカンニング竹山さんが出演した被害防止のCMが話題になりました。
あらためてCMを見て感じたのですが、今までは多世代で住んでいたため、何かトラブルが起きても相談する相手が物理的に身近にいました。
しかし、核家族化が進み、現役世代は詐欺電話がかかってくるような日中の時間に家族からの電話が取れません。
こうした家族構成の変化も詐欺を容易にしている要因だと感じました。

最近増えてきているのはSNSなどで著名人の顔写真などを無断で使って本人になりすまし、投資を呼びかけたり、商品購入を勧めたりする詐欺広告です。
堀江貴文さんや前澤友作さんなどがよく使われているようで、ネットでよく堀江さんが「被害者が自分に何とかしてくれ、と言ってくるが、自分にはどうしようもない」などと発言されていました。
それがよほどの程度を超えたのか、自民党の会合に出てSNSのプラットフォーム事業者への対応を迫るように発言されています。

日本では総じて「お金の話は表立ってするものではない」「労働によって得た金銭が素晴らしくて、投資によって得た金銭は汚い」といった考えが年配の方を中心に残っています。
その一方で労働による賃金や年金では生活ができないレベルまで社会の状況が悪化しており、国がNISAなどで投資を勧める状況となっています。
そのため自分に十分な投資知識がないにもかかわらず、周りの方と投資関係の相談をすることなく、こうした詐欺話に飛びついていってしまっています。

詐欺への対策は短期的には堀江さんや前澤さんが訴えたサイトの取り締まりなどでしょうし、長期的にはマネーリテラシーを高めていくということになろうと思います。
高齢者へのマネーリテラシー教育は時間的にも難しいでしょうから、結局、対策を打っていくしかないのかな、と思います。
マネーリテラシーについては、高校生の金融教育も始まりましたが、詐欺などトラブルに遭いやすいのが大学生ということもあり、事前の十分な被害防止の教育が必要でしょう。
一方で、投資は社会にお金を回していくための経済活動であり、投資で得たお金にキレイも汚いも無いと伝え、必要以上に怖がることもないことも伝えなければなりません。

高齢者の方がよく言われる「稼ぎに追いつく貧乏無し」のように、労働による賃金だけで十分に生活できる社会づくりも大事です。
ただ人口が減少していく中で、より効率的に経済を回していくために投資の推進も欠かせません。
これまでのリスクがあるから投資に触れなくていい、という時代から、自分が取れるリスクの中で投資に触れていく、という時代の変化を自分の中でどう消化していくかが試されています。