年配の方で理解しないまま投資信託を持つ方も増えています

滋賀県高島市饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩み終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

遺言作成の御依頼を受けると、現在お持ちの財産を確認させていただいています。
私の地元の年配の方だといくつかの特徴が見られます。

まずかなりの数の金融機関の口座をお持ちです。
ゆうちょ銀行、JAはもちろん、地元に支店がある金融機関の全てを持たれている方も珍しくありません。
お話を聞いていると、まだお仕事をされていた時代に、各家に行員の方が回られてきて、付き合いもあったので作ってそのままにしているとのこと。

また、定期預金や定額預金の本数も非常に多いです。
今は普通預金の金利がほとんど無いので、少しでも増えるもの、ということで選ばれているようです。

生命保険に沢山入られている方もよくいらっしゃいます。
終身ではなく定期保険で、一定期間が終わればお金が戻ってきますよ、と勧められて入っていると言われます。

農協や漁協の出資金がある方も多く、しかも財産として認識されていないので、こちらから一声かけないと見落としそうになります。

不動産については、自分の所有であるとおっしゃいますが、登記を確認すると先代や先々代以前の方の名義であることも珍しくありません。
念のためご依頼者さんの同意と委任状をいただいて戸籍を遡ってみますが、とても手が付けられないような人数の相続人となっていることもあります。

また家を建てるにあたり配偶者との共有名義になっているものも数多くあります。
共有名義自体は別に悪いことではないのですが、相続のタイミングなどで実際にお住まいになられる方に名義が集まった方が良いかと思います。

最近では、投資信託等の金融商品を持たれている方も増えました。
ご自身で興味や知識があってされている方は何の問題も無いのですが、金融機関の営業に勧められるがままに入っておられる方もいます。

遺言書の依頼を受けたご依頼者さんは、元本割れは嫌だからそれが無い商品にしてほしい、と言って買ったそうですが、商品内容を見るとそのリスクがありました。
リスクがあるだけならまだしも、既に元本割れしたものを持たれていて、半年ごとの報告書が送られてきても見方が分からず現状把握もできていませんでした。
現状のご説明をして、今後の方針をお尋ねすると、上がるのか下がるのかで悩みたくないので全て解約して預金として持っておく方針にされました。

ただ解約にあたり、営業の方と一対一でお話しをすると言いくるめられそうだから、と私も同席を求められ、特に口は挟みませんよ、と念押しして一緒にお話を聞きました。
営業の方は引き続き持ってもらえるように色々と話されましたが、私が傍にいるせいかやや歯切れの悪い説明でした。

途中でこちらも把握できていない積立型の投資信託も契約されていることが分かり、利益が出ていることが分かるとご依頼者さんが「こっちは残しておいた方が良いかな?」と聞いてこられました。
「どちらでもお決めになったら良いですけど、今後はさらに儲かるかもしれないし、損することもあります」と伝えると、結局解約されました。

営業の方が帰ってからお話していると、「欲をかいて買うのはダメだね」とおっしゃいました。
先ほどの利益が出ていた投資信託の時に「欲の顔が出たのでは?」と聞くと、「本当にその通り。でも、これで上がっているのか下がっているのか不安になることが無くなった」と言われました。

預貯金にしても不動産にしても金融商品にしても、自分でどれだけの量を持っていて、内容も把握できているのなら問題はありません。
しかし、多くの場合はどれだけ持っているかも分からないし、一つ一つの詳細も分からない、という方が多くいらっしゃいます。
これではご依頼者さん自身での現状把握ができません。
将来の不安をなくしたい、ということは今の自分自身を把握し、将来の目標を明確に立ててそのギャップを埋めていくことです。

自分自身で把握するために便利なのはエンディングノートです。
エンディングノートに描かれた項目に沿って順に把握すれば漏れが少なくなります。
また、保険や金融商品の内容が分からない時はIFAやFP資格を持つ専門家に聞くことで明らかにできます。

現状がある程度明らかになれば、今の状態のままでいることのメリット・デメリットがご説明できます。
またデメリットがある場合に、その解消を生前のうちに自分が行うのか、死後に遺族でしか解決できないのかもお伝えできます。

「家族に迷惑をかけたくない」とよく言われますが、何が迷惑になるのか、まずは現状把握からしてみましょう。