ストレスチェックが機能するのも信頼があればこそ

滋賀県高島市饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩み終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

公務職場でメンタルダウンを含め、職員が疲れている話をしました。
労働安全衛生法では、労働者が50人以上の職場ではストレスチェックをすることが義務づけられています。

高ストレスがかかっていないか確認して「うつ」にならないように事前にチェックするための仕組みです。
人事から質問票が配られ、外部機関が判定して、本人に結果が返されます。
この段階では、結果は人事も知りません。
ただチェックが一定の点数以上になると、お医者さんへの面談をするかどうかの問い合わせ用紙が入っており、ここで希望すると初めて人事が知ることになります。
お医者さんへの面談を受け、お医者さんが人事に意見を述べて、就業上の措置をすることになっています。

私自身が勤めていた時にどうしていたかというと、制度開始の頃は適当に書いていて、結果が返ってきても特に見ていませんでした。
退職を意識した頃からは、真面目に回答しました。
結果は大体、高ストレス。
お医者さんへの面談のススメが書かれていましたが、そこまではしませんでした。
ということは、退職してしまったので、人事も私がどういう状況だったかは知らないままというわけです。

毎日新聞にストレスチェックに関する記事が載っていました。

一番気になったのは、このストレスチェックの制度設計に関わった人が現状について述べた部分です。
1000人がストレスチェックを受けると100人が高ストレス判定が出るように設計されている。しかし、その中で5人以下しかお医者さんとの面談を受けていない状態、と言っているところです。
労働者自らが面談を申し出るのがハードルになっているのでは、という分析で、申告によって不利益処分をすることは禁じられている、とも書かれていますが、仕組みとしては破綻していると感じます。

実際にストレスチェックを受けた者として感じるのは、実際に人事に高ストレスであることを言えば、具体的な不利益処分をしなくても、心のどこかに何か引っかかりを持って、将来に影響を与えてしまうだろうな、ということです。
申し出をする労働者がそう思ってしまうということは、人事や職場と労働者の信頼関係に問題があるということです。
まぁ信頼関係さえあれば、年一回のストレスチェックでなくても人事に相談しているでしょう。

そして信頼関係に問題があると、ストレスチェックだけでなく、仕事のあらゆる所で人事と労働者がぶつかるところが出てきます。
対立するという意味ではなくて、互いに言っても無駄だな、と感じてしまうということです。

何かに挑戦するためには、リスクを許容してもらえる環境が必要です。
リスクを許容する環境とは、「提案しても怒られたり馬鹿にされたりしない。ちゃんとした内容なら採用してもらえる」という信頼があるということです。
この信頼がないと例えば「馬鹿にこそされないけど、考えておく、とだけ言われて採用してもらえない」と労働者側からは提案を躊躇し初めます。
提案が躊躇されて何も出てこないと、使用者側は「みんな何も言ってこなくてやる気が無いな」と思い悪循環が始まります。

互いに信頼がある環境であれば、労働者側はわざわざ業務外の時間を使ってでも提案を準備してきます。
使用者側は新たな挑戦に、ついて回るリスクを一歩踏み込んで引き受けます。
リスクを取ってもらえていると感じれば、労働者側は使用者のメンツや面目を潰さないために努力します。
使用者は自分だけでないチームの結果として新規提案を実現できます。
こうした好循環が生まれます。

昨日のコラムの公務員の職場でも今日のコラムのストレスチェックでもそうですが、基礎となるのは人と人との信頼関係ではないでしょうか。