植物性油脂からできた和ろうそく

滋賀県高島市饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩み終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

法要には欠かせないものがいくつかありますが、その一つがロウソクです。
本堂で使うロウソクは、市内にある和ろうそくの専門店「大與」さんで買います。

・大輿ホームページ

・Yahoo!ニュース 「琵琶湖のほとりで出会った「和ろうそく」歴史と伝統の手わざで日々の暮らしを豊かに」 2023/10/07

大與さんでは、ロウソクのロウの材料として櫨(はぜ)と米糠が使われます。
和ろうそくに火を付けると、形の良い灯りがともり、多少の風では消えません。
またまっすぐに立っていれば液だれもせずに綺麗なままで燃えていきます。

御門徒の方から、コンビニなどでも買える洋ロウソクではダメなのか、と聞かれますが、ダメなわけではありません。
ただ洋ロウソクの原材料は石油由来のパラフィンがほとんどで、燃えるうちに煤を伴った煙を出します。
このため御内仏(御仏壇)に繰り返し用いると、中に煤が付いていき汚れていき、金箔などが黒くなっていきます。
このことをご説明して、高価な御内仏ですし、できれば和ろうそくを使われた方が、大事に長く使えるのでは、とオススメしています。

お墓参りなどの際は煤を気にすることもないので、洋ロウソクでもどうぞ、と言っていますが、洋ロウソクの芯はだいたい糸製が多く細いため、灯りのサイズも小さく屋外の風で簡単に消えてしまいます。
和ろうそくの場合は、和紙や植物を和紙で巻いて太い芯を作るので、一旦付くと中々消えません。
実際、本堂でロウソクを消す時は簡単には消えないため芯自体をカットします。

和ろうそくは芯作りから職人の方の手間暇がかかるため、1本のお値段もそれなりにします。
そのため御門徒さんによっては、年忌法要の際にお布施とは別に「ロウソク料」として包んでこられる方もいらっしゃいます。

和ろうそくや洋ロウソクといった違いだけでなく、外が白いロウソクや朱色のロウソクなど色の違いもあります。
このため法要前に色々と質問されてきますが、どこで聞いたのだろう、と思うものもあります。

日常使いは白か朱色か聞かれることがあります。
本山の手引きを見ると葬儀については白で、日常や年忌法要は朱色と書かれています。
そこにどんな意味合いがあるのかネットを調べると百家争鳴ですが、私が聞いた話で一番真相に近そうだ、と思ったのは、本山の近くでは朱色のロウソクの方が安価だという理由です。

和ろうそくは使用済みのものも溶かし直して再利用が出来ます。
ただ溶かし直す時にどうしても芯で燃えた部分の炭が入ってしまうため、朱色の染料を入れて目立たなくして再利用しているというのです。
このため再利用のロウソクだから、白よりも少し安価になっていると聞きました。
これが本当の理由かは分かりませんが、一番納得しやすい話でした。

年忌法要でも五十回忌以降は朱色のロウソクですか、と聞いてこられるところもあります。
ウチの寺で昔からそういうルールだったのか、と確認してみたこともありますが、どうもそうでもないようです。
では、御門徒の方が住まわれている集落でそういう地域ルールなのか聞いてみても各家バラバラでした。
私はお葬式以外はこだわり無くお好きな方をお使いくださいと言っており、お寺では報恩講、修正会、彼岸会では朱色のロウソクにして、後は白にしています。

ロウソク以外も独特のルールがあるかのように聞いてこられるケースは多いですが、お寺としてのルールでも無く、地域のルールでも無く、「俺ん家(おれんち)ルール」だな、と思うことがしばしばです。
ルールを聞いてこられると、「なぜそうされるのですか?」と尋ねてみますが、明快な答えが返ってくることはほぼありません。
そのため、特に引っかかる点が無ければ、各家がやりたいと思う方法を尊重してやっていただくのが、ウチの寺のルールになっています。