外交の舞台裏で活躍する料理人たち

滋賀県高島市の饗庭山法泉寺住職の吉武学です。
人生のお悩みや終活のご相談をはじめ遺言・相続・葬儀・埋葬・終活のお悩みに「三つのそうだん」でお応えします。

歴史を学んだり、歴史に関する本を読むと必ず外交官が活躍する話が出て来ます。
日本では陸奥宗光や杉原千畝、吉田茂も外交官として活躍した時代がありました。
海外ではキッシンジャーやジョージ・ケナンなどがいます。

中でもウィーン会議で活躍したフランスの外交官タレーランは様々なエピソードがあり、調べるだけで非常に面白いです。
ナポレオンに協力していたものの裏切り、ナポレオン失脚後のウィーン会議で他国の利害関係を利用してフランスを守ります。
一方で、金もうけに精を出していない時は陰謀に手を染めている、と言われるほど暗躍していました。

先ほども出てきたウィーン会議では、料理人のアントナン・カレームに料理を出させて、グルメとして注目されました。
ウィーン会議の時とは違いますが、有名なのは2匹のヒラメのエピソードです。
当時は大富豪でもなければ2匹も大きなヒラメを手に入れることは不可能でした。
さっそく客にふるまうことにしたが、しかし2匹同時に食卓に出せば自慢と受け取られ、反発されることも予想されます。
そこでタレーランはあらかじめ使用人に指示して、1匹目のヒラメ料理を客たちの目前でわざと皿から落とさせて台無しにしてしまいます。
楽しみにしていたヒラメ料理を食べ損ねて客たちが落胆した所に、タレーランはすかさず2匹目のヒラメ料理を持って来させ、客たちは大いに歓喜したというものです。

このエピソードを私は「大使閣下の料理人」というマンガで知りました。

ベトナム大使の公邸料理人となった主人公が外交上の思惑を料理に乗せることの意味や、情報収集の大切さ、公邸がある地域を理解し、食材を把握することや、主人である大使との信頼関係が盛り込まれています。
料理がおまけではなく、料理を中心として外交が展開されていく様子が上手く表現されています。

そんな大使館や総領事館などの在外公館での料理人が不足しているとの記事がありました。

日本を伝えるために日本料理が作れるのはもちろんなのでしょうが、外交の正式な場面ではやはりフランス料理も必要になるでしょうし、多様な技量が求められます。
そして、記事中にもありますが、仕入れで注文した食材が届かなかったり、現地で調達できる魚種が少なかったり、食文化の違いやハードルが数々あると言われます。
そんな困難を抱えながらも給与はそれほどではない。
今の日本食ブームの中では、公邸料理人となれるほどの技量があれば、海外の通常の飲食店に行った方が収入は多いでしょう。
単なる箔付けでは人は集まらない、とあります。

タレーランや大使閣下の料理人の例もある通り、料理を通して外交に進展があることもあります。
しかし、外交の舞台裏で活躍する料理人たちに対する待遇は不公平というような環境です。
全ての、とは言えませんが、一定の基準を超える料理人たちは、外交官の一人としての雇用や待遇を受けるべきではないでしょうか。
料理人を外交の舞台裏で活躍するだけでなく、外交の顔としても認めるべきかと思います。